セミナー実行委員長挨拶

 数理の翼夏季セミナーはおかげさまで今年,節目の30回を迎えることになりました.30年前と言えば今日のようにパソコンやインターネットが家庭に普及することを誰も予想できないような時代であったと思いますが,人類は30年間不断の技術革新を続けて今日の状態に至りました.そのような技術革新をもたらした基盤は言うまでもなく数理科学であります.数学や理科はコンピュータ技術だけでなく,ありとあらゆる日常生活に応用されています.資源に乏しい我が国は科学技術で国際的に存在感を示す必要があると言われはじめて久しいですが,今日の日本では残念ながら「数学離れ・理科離れ」が危惧される状況となっています.最近になって,この問題を解決するべく様々な科学の楽しさを伝える努力が盛んに行われるようになってきました.

 しかし,本セミナーの創始者である広中平祐先生は既に30年前に先見の明を持たれて高度な数理科学教育の重要性に気づかれていました.そして,高校生を中心とした若者を夏季合宿に招待し,第一線で活躍する研究者の講義により刺激を与え,参加者同士の自由闊達な交流を促すスタイルの本セミナーを始められました.

 近年では参加同窓生を中心としたNPO法人により本セミナーが主催されるようになりその精神は脈々と受け継がれています.また,本セミナー同窓会は湧源クラブとして定常的にアカデミックな交流を持っております.本セミナー開催のための実務的部分の多くは,やはり同窓生を中心とした学生スタッフにより支えられています.その他多くの方々のご尽力により本年も数理の翼夏季セミナーを実施する運びとなりました.

 自然科学を支える大きな思想の一つに再現性というものがあります.同じ条件で同じ実験を行うと同じ結果が再現されるという概念です.その様を定量化する際に数理科学が威力を発揮するわけですが,数理の翼夏季セミナーには再現性はないかもしれません.毎回バラエティに富んだ参加者の皆さんと学生スタッフ,講師の先生方のインタラクションは良い意味で予想を裏切る大きな刺激を生み出してくれます.本年のセミナーでは学生スタッフの発案で虹の七色を テーマカラーとしています.様々なスペクトルを潜在的に持った皆さんのご応募を心よりお待ちしています.

第30回数理の翼夏季セミナー実行委員長
桂木洋光(かつらぎひろあき)