★『数理の翼』夏季セミナーとは?
 
 

 『数理の翼』夏季セミナーは、数理科学に強い情熱と優れた資質を持つ若者に学年や地域の壁を越えた交流の機会を提供し、数理科学に対する意欲を育む契機を作ることを目的とする合宿形式のセミナーです。1980年に第1回セミナーが行われて以来、(財)数理科学振興会(理事長、広中平祐:フィールズ賞授賞者)の主催で、毎年1回夏休みに場所を変えて行われてきました。2001年8月の第22回セミナーは数理科学振興会と、その同窓会組織「湧源クラブ」の共催として開催されました。
 2002年8月の第23回セミナー以降は、NPO法人「数理の翼」が主催します。

 参加者は、全国から募集・選考された、高校生・大学生・大学院生を中心とする数十名の若者達です。高校生は、そのうち7〜8割程度、残りが大学生以上となっています。宿泊費、講師の講演料などの費用は全て主催者が負担し、参加にあたって、参加費は必要ありません。
 期間が約一週間と短いということもあり、具体的知識を増やすとか、特定の技術を身につけるということではなく、数理科学の分野における創造の芽を育み、若い力でそれを発展させていく機会となることを目指しています。


 このセミナーの内容は、以下の通りです。
 
・招待講師による講義
     
     数理科学をはじめとする科学の各分野から大学・研究所などで第一線の研究をなさっている、著名な研究者の方々を数名招待し、それぞれの専門分野に関する密度の濃い話がなされます。
     講義の内容が十分には理解できないということもしばしばありますが、自分にとって未知なことが沢山ある、ということを認識し、講義をききながら疑問点や興味が自然発生的に湧いてくることを重視しています。
     これらの疑問点や興味は、セミナーの中で、講師の先生方に質問したり、他の参加者と話し合う中で、解消されたり、より一層深く掘り下げられていきます。
     
・セミナーOB・OG講師による講義
     
     『数理の翼』夏季セミナーは、既に20回目を超える歴史が積み重なり、初期のセミナー参加者の中には、既に大学・研究所などで研究職に携わる方も増えてまいりました。そこで、このようなセミナーOB・OGの中からも講師を引き受けて頂いています。
     「セミナーの先輩」として、参加者にとってより身近な立場からのアプローチによる講義がまた一味違った刺激になると期待されるほか,夜の自由時間中などにもOB・OG講師をつかまえて,昼間の講義の内容や講師の研究内容などについて質問責めにする参加者も少なくなく,まさに数理の翼ならではの内容と言えるでしょう.
     
・夜ゼミ
     
     夜中の自由時間に参加者が自主的に開くゼミのことで、毎年セミナーを開催する中で自然発生的に生まれたものです。
     『数理の翼』夏季セミナーでは、プログラムのない夜間を、毎日宿舎内での自由時間とし、さらに宿舎の大広間を夜ゼミ用として開放しています。
     この時間、参加者の中にはリクエーションを楽しむ人や休養を取る人もおり、なごやかなひとときですが、過半数の参加者は、大広間に集まって夜ゼミに参加します。
     夜ゼミの中には、あらかじめ参加者の有志が計画して、掲示版に予告して人を集めて行なうものもありますが、大広間に集まった参加者の中から自然発生的に始まるものもあります。かくして、夜中の自由時間の大広間では、あちこちで小さなの人の輪がいくつも生まれ、備え付けの黒板やスタッフが用意した携帯用ホワイトボードを囲んで議論が白熱化し、深夜まで及ぶこともしばしばです。
     ゼミの中身も、昼間の講義についての解説や疑問点に関する夜ゼミがもっともメジャーですが、それだけに留まらず、数学や物理学生物などの諸分野について、参加者が日頃考えていることを発表、討論したりするような夜ゼミもあれば、大学生が高校生に大学の研究室の様子を説明する夜ゼミもあれば、自分たちの人生観などについて討論する夜ゼミなど様々で、個々の興味分野について情報を交換・吸収したり、意見を闘わせることができます。
     このように「夜ゼミ」は、参加者の能動的な参加の場として大きな意義をもっています。
     
・参加者発表
     
     参加者自身が、これまで講師が立っていた場所に立って、自分の研究や考えを発表する場で、セミナー期間中に1〜2回程度予定されています。参加者で、発表を希望する人は、セミナー期間中事前にスタッフに申し込んで行なう事ができます。
     毎年10数組程度の発表があるようです。
     内容も、セミナー前から準備して発表する人から、夜ゼミで盛り上がった内容をまとめて、そのグループメンバーで発表しようとする人まで、様々です。
     特に、「人前で自分の考えたことを発表する」機会が日常生活ではあまり与えられていない高校生には、とりわけよい刺激になるようです。
     
・その他
     
     その他にも、身近な問題を取りあげて討論するシンポジウム、数名単位のグループに分かれて輪読を行なう「小人数セミナー」、科学実験、参加者同士の交流を深める為のレクリエーションや自由時間などが、その年々のセミナースタッフの創意工夫の基に盛り込まれています。


 このように参加者にとって『数理の翼』夏季セミナーは、講義や他の参加者との交流などを通じて、未知の分野、新しい考え方の存在に気付くことができ、大きな刺激を受ける機会となっています。
 過去の『数理の翼』夏季セミナーの参加経験者は、いずれもこのセミナーで得た感動を元に、現在数理科学を中心とする各方面で活躍しており、今後もセミナーの発展と併せてその将来が期待されます。


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