ご挨拶
特定非営利活動法人(NPO法人)数理の翼では、今年で27回目を迎える数理の翼夏季セミナーで培った「学びの方法」を、 より多くの方に体験していただくことを目的として、 「数理の翼ワークショップ2006」を開催いたします。 NPO法人数理の翼は、数理科学に関心のある高校生向けに、合宿形式の数理の翼夏季セミナー(以下翼セミナーと略します)を主催しています。 翼セミナーでは、最先端の研究者の講演を聞くだけでなく、講師やボランティアとして参加する翼セミナー卒業生と高校生の間、 あるいは高校生同士の交流を通じて、大いに知的興奮を味わう機会を提供しています。 数理の翼ワークショップ2006は、翼セミナーで起こる交流と刺激を短い時間で、翼セミナーのミニ版として創りだそうという試みです。 数学・理科に興味を持つ高校生をはじめ、理科教育関連の方、さらには科学に興味を持つ一般の方も、 身近に最先端の研究に触れるよい機会です。多くの方のご参加をお待ちしています。
開催概要
- 日時 : 2006年7月30日(日) 13:00~17:00
- 会場 : 日本科学未来館7F 会議室2
- 対象 : 自然科学に興味を持つ高校生以上の方
- 定員 : 80名 (先着順)
- 主催 : 特定非営利活動法人 数理の翼
- 協力 : 日本科学未来館
講師
- 中原裕之さん(理化学研究所)
プログラム紹介
第1部 講義
- 講師 : 中原 裕之先生 (理化学研究所・脳科学総合研究センター・理論統合脳科学研究チーム)
- テーマ : 数理神経科学-数理科学と脳科学、脳を創ろう!
- 内容 : 数理/計算神経科学という研究分野の紹介をしつつ、その研究例を紹介します。 「こころ」や「知能」を創り出すという夢に向かっていかにアプローチしているか、 神経科学の研究で数理がいかに役立つか、どんな数理科学が使われるのか、 その息吹を感じてもらえるようにしたいと思います。具体的には、情動と意思決定での ドーパミン神経細胞の機能とか情報幾何による多因子の数理解析などの話を考慮中です。
第2部 少人数ゼミ
第2部では、11のグループに分かれて(事前に希望調査を行います)ゼミを行います。 10人の大学院生と、第1部講師の中原先生あわせて11人がチューターとなり、 以下のテーマのお話をしていきます。 参加者の皆さんには以下のテーマから一つを選んでいただき、 そのテーマのゼミに参加していただきます。 一グループ5~7人という最高の環境の中で、 興味あるテーマについて理解を深めていってください。
テーマ1 : 対称性の数学
対称性という言葉は、数学のみならず、物理などでも非常に重要な概念です。 対称性のある対象は綺麗であり、またそこには調和のとれた世界が広がっています. 19世紀Galoisは代数方程式に潜む対称性を「群」というものにより捉え、 現在Galois理論と呼ばれている理論を打ち出しました。 今回は、そのような対称性と群との関わりについて話をしたいと思います。
テーマ2 : 細胞内シグナル伝達-生命現象、病因メカニズムの解明を目指して
生命体は、絶えず変化する外的環境に対応しながら恒常性を維持しています。 これを可能にしているのが、細胞内シグナル伝達経路です。細胞は細胞膜表面に発現した受容体を介して、 細胞外からの刺激を受け取り、多種多様なシグナル伝達経路を通じ、刺激情報を核内へと伝達します。 今回は、シグナル伝達機構に関して、その概要と最近の知見について、いくつか紹介したいと思います。
テーマ3 : 宇宙に触る~日本の宇宙科学の最前線
昨年の夏に打ち上げられたX線天文衛星「すざく」の検出器を作ってきた研究室で 勉強している大学院生です。今は、その検出器からのデータを解析して、中性子星や ブラックホールといった特殊な天体の研究をしています。学生として見た日本最先端の 宇宙科学の研究現場の雰囲気や、これまで学んできた物理学の魅力をお伝えできれば嬉しいです。
テーマ4 : 1.科学的なアンケートの作り方 2.脳波発生源解析の方法 3.脳機能計測と携帯電話の意外なコネクション
ふつうのアンケートと学術研究で使う質問紙はどう違うのか。 どのような数学・統計的方法がその基礎を担っているのか。実習もしたいと思います。 脳波は観測される時点では単なる電位変化の波ですが、それをもとにイメージングを(不完全ながらも)行おう、 という方法が最近多数提案されています。それらの特徴と欠点を解説します。実際に目の前で解析してみたいと思います。 脳波など脳機能計測の際に使われる信号現解析と、日常使っているケータイ電話のプロトコルCDMAは、 実は、数学/統計的には非常によく似た(というか同じ)手法を使っています。方法論と応用の話をします。
テーマ5 : 分子の構造とその機能
分子の中には、様々な色を持つものや磁石にくっつくもの、電気を通すものがあります。 実は分子の色と分子の構造には、切っても切れない密接な関係があります。 前半は分子の構造と色の話を通して、どのように分子の構造を解き明かしているか、を知ってもらいます。 また、磁性や導電性のような機能は、一つの分子の構造だけで決まる性質ではなく、 分子が集合体を作ることによって発現する性質です。 後半では、磁石になる有機分子と構造の関係を説明し、私の研究分野における最近の動向を紹介します。 時間があれば化学者の研究スタイルもお話します。
テーマ6 : 惑星探査と太陽系の理解
太陽系はどのようにしてできたのか?人類は広い宇宙で独りぼっちなのか?! 惑星科学者たちは、こんな大げさな目的を掲げながら、小さな一歩を日々積み重ねています。 今回は私の研究対象でもある火星を中心に、最近の惑星探査と探査からわかってきたことについてお話し、 (私の知っている)日本や世界の惑星科学者がどのようなことを考え、 行っているかをお知らせできればと思います。
テーマ7 : 素粒子理論+弦理論あれこれ
前半は、量子力学から始めて、素粒子理論の標準模型や弦理論についての大雑把な話を予定してます。 後半は、素粒子理論のアイディアのいくつかを、なるべく簡単な計算をしながら確認して頂くつもりです。
テーマ8 : ”分子機械”はつくれるか―究極のナノマシンへの挑戦―
近年「ナノテクノロジー」という言葉をよく耳にするようになりました。 化学の分野でも、ナノメートルの大きさで機械のようなはたらきをする分子、 「分子機械」をつくろうという研究が盛んになされています。 いまや、分子レベルの歯車やモーターも夢物語ではなくなりつつあります。 今回は、化学の基本をおさえながら、最新の論文も含めた分子機械の研究を紹介したいとおもいます。 まだ新しい研究分野ですので、最後には参加者の皆さんにも「分子機械」のアイディアを出してもらおうと思います。
テーマ9 : 音楽情報科学--身近で便利な音楽にまつわる話
音楽を聴いた時に心が癒されることがあるのは何故?歌の上手い下手ってどうして聞き分けられるの? 音楽情報科学という研究分野の紹介をしつつ、その研究例を紹介します。 具体的には音楽の音響的側面・言語的側面において物理や情報がどう役立つか、 身近で便利な音の豆知識、を知ってもらい、コンピュータで「聴覚」を創り出せるか?について皆で考えていきたいです。
テーマ10 : 1.「コンピュータによる天体現象(ブラックホール・超新星爆発など)への挑戦」 2.「一般相対性理論と日常技術の関係」
観測することが難しい天体現象(ブラックホールや超新星爆発)を、コンピューターシミュレーションによって扱う際に求められる技術について、 またこの分野の進歩が、今後理論や観測にどのような影響を与えると考えられるかについて話す。 GPSや航空機に搭載されている光ジャイロなどには、相対性理論が深く影響を与えている。 日常で使われている機器がどのような技術に支えられているか、 そこに相対論による現象(数式を使わないで紹介)がどのようにかかわっているかについて話す。 もし相対論を考慮しなかったらどうなるかについて議論したい。
テーマ11 : 数理神経科学-数理科学と脳科学、脳を創ろう!
数理/計算神経科学という研究分野の紹介をしつつ、その研究例を紹介します。 「こころ」や「知能」を創り出すという夢に向かっていかにアプローチしているか、 神経科学の研究で数理がいかに役立つか、どんな数理科学が使われるのか、 その息吹を感じてもらえるようにしたいと思います。 具体的には、情動と意思決定でのドーパミン神経細胞の機能とか情報幾何による多因子の数理解析などの話を考慮中です。 (第1部講師の中原先生によるゼミです。第2部では、第1部で話し切れなかったことをお話する予定です)
申込方法
※申込は終了しました。 件名を「ワークショップ申込」とし、本文に下記事項を記載の上、7月21日(金)までにevent@npo-tsubasa.jpまでメールにてお申込みください。
- 氏名
- メールアドレス
- 所属
- 参加してみたいゼミを第三希望まで
お問い合わせ
数理の翼ワークショップについてのお問い合わせは、以下までご連絡下さい。
E-mail : event@npo-tsubasa.jp
TEL : 03-3459-0245
FAX : 03-5908-9704
少人数セミナー議事録
少人数セミナー講義録 (PDF, 14ページ)